2008年05月10日

スタンダール「赤と黒」19世紀年代記 登場人物

 この登場人物紹介は、野崎歓訳「赤と黒」を基にしています。

ジュリヤン・ソレル

 物語の主人公。フランスの田舎町ヴェリエールで製材小屋を経営しているソレル親父の息子。体つきはひ弱だが、美しい顔と優れた頭脳を持つ。
 強烈な自尊心と野心を持ち、聖職者としての成功を目指す。
 密かにナポレオンを崇拝している。物語の舞台はナポレオン失脚後のフランスであり、ナポレオン支持者は危険な立場であった。

 年のころ十八、九の小柄な青年で、見かけは弱々しく、整ってはいないが繊細な顔立ちで、鷲鼻だった。穏やかなときは思慮深さと情熱を湛えている大きな黒い瞳は、いまは凄まじいまでの憎悪に燃えていた。
(中略)
 これほどはっきりと性格の特異さが刻まれた顔も珍しいだろう。すらりと均整のとれた体つきは、力強さよりも軽やかさを漂わせていた。(本文より引用)

 娘っ子のような青白く優しい顔立ちの裏に、出世できないなら死んだほうがましだという断固たる決意が秘められていたとは、だれが気づいただろう。(同上)


ソレル親父

 ジュリヤンの父親。製材小屋を経営している。強欲かつ狡猾な老人で、レナール氏を手玉に取って大金をせしめる。ひ弱な秀才であるジュリヤンを疎ましく思い、親子の情愛は持っていない。

 ジュリヤンは本を読んでいた。ソレル親父にとってこれほど気に食わないことはなかった。ジュリヤンの体がかぼそくて力仕事にむかないこと、兄たちとは大違いであることは許すとしても、本の虫であることは我慢ならなかった。
(中略)
「この怠け者めが!あいかわらず益体もない本など読みふけりやがって。鋸を見てろといってあるだろう?」(本文より引用)
 


レナール氏

 ヴェリエール町長。貴族であるが強欲で見栄っ張り。成り上がり者のヴァルノ氏に対抗意識を燃やしている。
 自分の体面にしか関心がなく、ジュリヤンとレナール夫人の関係に全く気が付かない鈍感な男。

 一見したところ、町長としての威厳に加え、五十近い歳の男ならではの魅力があるとさえ思える。だが、やがてパリからの旅人は、何とも狭量で気のきいたところのない、うぬぼれた横柄な男だと知って不快を覚えるだろう。(本文より引用)

「女ってのはみんなこの調子だ」とレナール氏は笑い飛ばした。「機械にはいつだって何か、修理が必要ときている」
 この種の軽口には慣れているとはいえ、夫のいい方にレナール夫人は傷つけられた。(同上)


レナール夫人

 レナール氏の妻であり、ジュリヤンが家庭教師となる子ども達の母親でもある。年齢は30歳ほどの美しい女性。内気で物静か。育ちが良いが世間知らずで信心深い。
 10歳年下のジュリヤンに惹かれる。

 レナール夫人は背が高くすらりとして、かってはかの山間の人たちのいうとおり、土地で一番の美人だった。
(中略)
 パリの人間の目には、こういう純真ではつらつとした、いかにもうぶな魅力が、官能を甘く刺激するものとさえ映ったかもしれない。そんな種類の評価を勝ち得たと知ったなら、レナール夫人はひどく恥かしく思っただろう。(本文より引用)

 ようやく夫人は、ジュリヤンの容貌の際立った美しさに気づいた。そのほとんど女のような顔立ちや、おずおずとした様子は、自分も極端に内気な女性である夫人にとって、少しも滑稽とは思われなかった。(同上)


デルヴィル夫人

 レナール夫人のいとこであり親友でもある。ジュリヤンに警戒心を抱き、レナール夫人から遠ざけようとする。

「あなたの家庭教師君、どうも信用ならない」デルヴィル夫人に何度かいわれたことがあった。「いつでも何か考えていて、やることはすべて計算ずくという感じよね。陰険だわ」(本文より引用)


エリザ

 レナール夫人の小間使い。ジュリヤンに好意を持つが失恋し、ジュリヤンを憎むようになる。

「断られたって誰にです?」レナール夫人は息を詰まらせながら尋ねた。
「だれって、もちろんジュリヤンさんです」小間使いはすすり泣きながら答えた。(本文より引用)


フーケ

 ジュリヤンの親友。材木屋を経営している。堅実かつ誠実な性格で、最後までジュリヤンへの友情を失わない。

 背が高く、不恰好な体つきをし、ごつごつといかめしい顔立ちに巨大な鼻のついた青年だが、人好きのしない容貌にもかかわらず気立てはいたってよかった。(本文より引用)

「いいかい、経済の点だけから考えたって、だれに指図されることもなく、材木商売で立派に百ルイ稼ぐほうが、たとえソロモン王の治下であろうが、政府に仕えて四千フラン受け取るよりもましなんだぞ」(同上)


シェラン司祭

 ヴェリエールの司祭であるが、レナール氏と対立して解任させられる。ジュリヤンに神学を教える。敬虔で慈愛に満ちた老人。
 ジュリヤンを可愛がるが、彼の性格の中に危険なものを感じて将来を案じる。

 ヴェリエールの司祭は八十歳の老人とはいえ、山の清冽な空気のおかげで鉄のような健康と意志に恵まれていた。(本文より引用)

「私にはつらいのだ、きみの性格の奥底に、何か暗い情熱が仄見えるのが。(中略)きみは確かに、頭はいいだろう。だが、どうか一言いわせてほしい」司祭は目に涙をためて続けた。(同上)


ヴァルノ氏

 ヴェリエールの貧民収容所の所長。暴利をむさぼって私腹を肥やしている。貧しい出身から成り上がったが、今では町長であるレナール氏の立場も脅かしている。
 かってレナール夫人に言い寄ったこともあるが、夫人からは嫌われている。

 なぜならこのヴァルノ氏とは、背が高くたくましい体格をした若い男で、血色のいい顔に黒く太い口ひげをはやした、田舎では美男子と呼ばれるたぐいの、粗野であつかましく騒々しい連中の一人だったからだ。(本文より引用)

 ジュリヤンはヴァルノ邸に出かけたことがなかった。ほんの数日前には、あいつを棒でぶちのめして、警察沙汰にならないやり方はないものかと考えていたくらいだ。(同上)


ピラール神父

 ブザンソンの神学校の校長。シェラン神父の友人。厳格で激しい性格。ジュリヤンにも厳しく接するが、やがて良き理解者、保護者となる。
 ラ・モール侯爵とフリレール神父の争いに関わったことにより校長職を追われることになる。

 面長の顔は赤い斑点だらけで、額だけが死者のように青白い。赤い頬と白い額のあいだで輝いている二つの小さい黒い目は、どんな勇者でもたじろがせる目だった。(本文より引用)

「きみの内には、俗人に反感を抱かせる何かがある。どこでも妬みや中傷がつきまとうだろう。(中略)好意を持っているふりをする者がいても、それはきみをもっと確実に裏切るためだ」(同上)


フリレール神父

 ブザンソンの副司教。貧しい身から大地主となり、同じく大地主であるラ・モール侯爵と土地所有をめぐって訴訟争いを起こす。出世欲の強い野心家で司教の椅子を狙っている。
 ラ・モール侯爵の味方となったピラール神父を敵視している。

 副司教の整った顔には、驚きの表情に加えていかにも嬉しそうな色が浮かんだかと思うと、一転して厳しい面持ちになった。
(中略)
 しかし顔立ちにいかにも抜け目なさそうなところがあるから、この美貌の持ち主が少しでも気配りを怠ったなら、信用ならない男だと思われたかもしれない。(本文より引用)


ラ・モール侯爵

 パリで大きな力を持つ貴族。大臣の地位を狙っている。大金持ちであるがケチではない。気位は高いが、快活で気さくな面も見せる。ジュリヤンの能力を高く買い、重用する。

 そこに痩せた小柄な男がいた。目つきは鋭く、金髪のかつらをかぶっている。神父はジュリヤンのほうを振り向き、相手に紹介した。それが侯爵だった。なかなか実感が湧かなかった。それほど侯爵の物腰は丁寧だった。(本文より引用)


マチルド

 ラ・モール伯爵の娘。19歳。美貌と才覚に恵まれているが、高慢で気まぐれ。英雄的な行為により刑死した先祖を崇拝している。
 サロンにやってくる貴族たちをやり込めるのが唯一の楽しみであるが、使用人の身分ながら誇り高いジュリヤンに興味を抱く。

 見事な金髪をした、見目うるわしい娘がやってきて、ジュリヤンの向かいに腰を下ろした。ジュリヤンは少しも心惹かれなかったが、しかし注意深く観察するうち、これほど美しい目は見たことがないという気がしてきた。だがその目には、魂の冷酷さが表れていた。(本文より引用)

 <男にとって本当の栄誉は死刑宣告くらいのものよ>とマチルドは思った。<お金で買えないのはそれくらいでしょう>(同上)


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pjo1062002 at 15:03│TrackBack(0)フランス文学 | スタンダール

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