2008年02月09日
キャッチャー・イン・ザ・ライ 登場人物
この登場人物紹介は、村上春樹訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を基にしています。
ホールデン・コールフィールド
物語の主人公で16歳。ペンシルヴェニア州にある全寮制のペンシー高校に在籍。退学を繰り返し、現在が四つ目の学校であるが、そのペンシーも退学となる。
父親は会社の顧問弁護士で、かなり収入があるようである。自宅は、ニューヨークにある高層アパート。
ヘビースモーカーですぐに息が切れる。酒は強い。
身長は6フィート2インチ半(約186cm)。
髪型はクルーカット(軍隊式の刈り上げた髪型)、頭の右半分に白髪が生えている。
赤いハンチング帽がお気に入り。
読書は結構好き。ハーディ、モーム、フィッツジェラルドなどは気に入っているが、ディケンズ、ヘミングウェイなどは好みでないようである。
映画は嫌い、芝居も好きでない。
周囲のインチキな大人、友人達に対して常に苛立っているが、純真な子供は好きである。
こうして話を始めるとなると、君はまず最初に、僕がどこで生まれたかとか、どんなみっともない子供時代を送ったかとか、僕が生まれる前に両親が何をしていたかとか、その手のデイヴィッド・カッパフィールド的なしょうもないあれこれを知りたがるかもしれない。でもはっきり言ってね、その手の話をする気にはなれないんだよ。(本文より引用)
でもサマセット・モームの「人間の絆」みたいな本もある。僕はこの前の夏にその本を読んだ。なかなか悪くない本だった。(同上)
でもDBに対してひとつ納得できないのはさ、彼がそれほど戦争を憎んでいながら、なおかつ去年の夏、僕にヘミングウェイの「武器よさらば」を読ませたことだ。(同上)
僕は「グレート・ギャツビー」に夢中になってしまった。ギャツビーくん。オールド・スポート。あれには参っちゃったね。(同上)
フィービー
ホールデンの妹。ニューヨークの小学校に通う10歳。ホールデンの一番の理解者。ホールデンについていきたいために、学校や家も捨てようとする。だが、それを許さないホールデンとケンカとなってしまう。
「ねえ、一緒に行っていいでしょ?ねえ、ホールデン、いいでしょ?お願い」
「だめ。黙れ」(本文より引用)
「学校なんかに行かないって言ったでしょう。あなたはあなたで好きなことをすればいいじゃない。わたしはね、とにかく学校なんかに戻りませんから」(同上)
「はい。もう少し切符を買っといで」
フィービーは僕の手からお金を受け取った。「あなたのことをもうべつに怒ってないんだよ」と彼女は言った。
「知ってるよ。だから早く行っておいで。すぐにまた回り出しちゃうからさ」(同上)
DB
ホールデンの兄。一説には、作者の分身だと言われている。作家であるが、今はハリウッドで映画の脚本を書いている。映画嫌いのホールデンには、それが不満である。
この作品は、ホールデンが兄のDBに話したことと同じことを、読者にも話して聞かせるという設定になっている。
今から君に話そうとしているのはただ、去年のクリスマス前後に僕の身に起こったとんでもないどたばたについてだよ。(中略)実を言えばDBにだってその程度の話しかしてないんだ。(本文より引用)
ひょっとして君は名前を耳にしたことがないかもしれないからいちおう説明しておくと、彼は「秘密の金魚」という短編集を出していて、こいつは掛け値なしに最高の本だったね。なかでいちばんいいのは「秘密の金魚」っていう短編で・・・(同上)
ところが今じゃハリウッドに移って、せっせと身売りみたいなことをしている。そうだよ。僕の兄のDBがだよ。僕にとことん我慢できないものがひとつあるとしたら、そいつは映画だね。(同上)
DBは僕に尋ねた。このことについて、つまり今まで君に話してきたこの一連のできごとついて、僕がどう考えているのかってね。(中略)
僕にとりあえずわかっているのは、ここで話したすべての人のことが今では懐かしく思い出されるってことくらいだね。たとえばストラドレイターやらアックリーやらでさえね。まったくの話、あのやくざなモーリスのやつでさえ懐かしく思えるくらいなんだ。わからないものだよね。(同上)
アリー
ホールデンの弟。フィービーの兄にあたる。白血病で死んでいる。物語に直接登場しないが、ホールデンの回想の中でしばしば登場する。
弟のアリーは左利き野手用のミットを持っていた。(中略)彼がその指の部分や、腹の部分やら、とにかくいたるところに詩を書き込んでいたからなんだ。緑色のインクでね。弟がどうしてそんなことをしたかっていうと、守備についてバッターがボックスに立ってないときに、何かを読めるといいのにと思ったからだ。(本文より引用)
アリーは二つ年下だったんだけど、僕よりだいたい五十倍くらいは頭がよかった。ほんとにとびっきりかしこい子どもだったんだ。(同上)
誰かに腹を立てたことなんて一度もなかった。赤毛はすぐに頭に血がのぼるって言われるけど、アリーだけはべつだね。(同上)
弟が死んだ夜、僕はガレージで寝て、そこの窓ガラスをこともあろうに全部こぶしで割っちまったんだ。(同上)
スペンサー先生
ペンシー高校の歴史の先生で、腰の曲がった老人。別れの挨拶にきたホールデンに説教する。
「人生とはゲームなんだよ、あーむ。人生とは実にルールに従ってプレイせにゃならんゲームなんだ」
「はい、先生。そのとおりです。よくわかっています」
ゲームときたね。まったくたいしたゲームだよ(本文より引用)
「私は君の頭に分別というものを入れてやりたいんだよ、あーむ。君を助けたいと思うんだ」(中略)
先生は本気でそう思っていたんだ。それはよくわかっていた。でも僕らはポールのまったく逆の側にいたわけだし、そりゃどうしようもないよね。(同上)
ロバート・アックリー
ペンシー高校の生徒。寮ではホールデンの隣の部屋に住んでいて、ホールデンの部屋にしょっちゅう暇つぶしにやってくる。歯が汚くてニキビ面。周囲からは嫌われている。ストラドレイターが苦手。
僕らのウイングでは、二部屋にひとつシャワーがついている。部屋と部屋の真ん中についているわけだ。そして一日に八十五回くらいこのアックリーのやつが、こっちの部屋に押しかけてくるんだ。(本文より引用)
こいつはいつだってひとの持ちものを手に取って、それをじろじろと眺めるんだ。(中略)おまけにこの男ときたら、何かを見終わると必ずそれを違う場所に戻すんだ。わざとそうしているわけだよ。(同上)
「ストラドレイターに対してそんなに頭にくるのは、たまには歯を磨けって注意されたからだろう。」(中略)
「歯くらい磨いてる。余計な口出しはするなよ」
「いや、磨いてなんかいないね。昔から君のことを見ているけど、歯なんてぜんぜん磨いてないじゃないか」(同上)
ウォード・ストラドレイター
ペンシー高校の生徒。ホールデンのルームメイト。美男子だが自惚れ屋で女たらし。ジェーンとデートしたことがきっかけでホールデンとケンカになる。
そのとき突然ドアがばたんと開いて、ストラドレイターがえらい勢いで飛び込んできた。この男はいつだって大急ぎなんだ。(本文より引用)
「よう」とストラドレイターが言った。「ちっと頼みごとがあるんだけどさ」
「なんだい?」と、僕はあまり気乗りのしない声で言った。この男はいつだってなにかちっと頼みごとがあるんだ。(同上)
部屋に戻ったとき、ストラドレイターは鏡の前でネクタイを締めているところだった。こいつはなにしろ、そのろくでもない人生の半分くらいを鏡の前に立って過ごしているんだ。(同上)
「お前は彼女の名前がジェーンかジーンかもわからないんだろう、この低脳野郎!」
「黙れ。いいか、ホールデン、この野郎、同じことを何度も言わせるな」とストラドレイターは言った。彼はほんとに腹を立てていた。(同上)
モーリス
ホールデンが一日目に泊まるホテルのエレベーターボーイ。宿泊客に売春婦をあっせんして稼ぐヤクザな男。世間知らずのホールデンは彼のせいでひどい目にあう。
「あっちの方は、今夜いかがでしょうね?」
「僕がかい?」僕はそう言った。それはすごく間の抜けた答えだった。でも突然真っ向からそんなことを質問されたら、面食らっちまうものじゃないか。(本文より引用)
「なあチーフ、俺だって何も手荒な真似はしたくねえんだよ。そんなことはできればやりたくねえんだ。でもやむを得ないって雰囲気だな」(同上)
サニー
モーリスの手配でホールデンの部屋にくる売春婦。彼女の言動に、ホールデンはすっかり気が滅入ってしまう。
問題は僕の方にやりたいという気持ちが起きないことだった。正直なところ気分が沈み込んで、とてもセックスどころじゃなかった。彼女が僕を落ち込ませたんだ。(本文より引用)
「ちょっとあたしの服をとってくんない? それともそういうのってご面倒すぎるかな?」彼女はうす気味の悪い娘だった。(同上)
サリー・ヘイズ
ホールデンの女友達。美人だがミーハー。二日目に、ホールデンは彼女とデートするが、ささいなことから口論になってしまう。
「今日は日曜日だけどさ、マチネーも探せば少しはあると思うんだよ。慈善公演とかさ、そういうやつ。よかったら行ってみないか?」
「いいわね。ご機嫌」
ご機嫌ときたね。何がいやといって、こんなにいやな言葉はないんだよな。(本文より引用)
「えーと、あの子とどっかで会ったことあるみたい」(中略)どこへ一緒に出かけても、サリーときたら必ず誰かどっかで会ったことのある男をみつけちまうんだ。(同上)
「僕が言ったのは、ノー、大学に行ったりしてたら、行きたいと思う素晴らしい場所なんてもうありゃしないだろうってこと。(中略)先になったら、話なんかぜんぜん違ってきちゃうんだよ。僕の言いたいことが君にはちっともわかっちゃいないんだ」
「わかるもんですか!きっとあなたにだってわかってないんだわ」とサリーは言った。(同上)
ジェーン・ギャラガー
ホールデンの女友達。ホールデンは何度か彼女に電話をするが、結局一度も話をすることができない。
ジェーンってのは変ちくりんな女の子だったね。正確な意味で美人って呼ぶことはできないと思う。でも彼女は僕をノックアウトした。(本文より引用)
家族を別にすれば、ジェーンは僕がアリーの野球ミットを見せたただ一人の相手だった。(同上)
それから突然、涙の粒がチェッカーボードの上にぽつんと落ちた。赤い升目の上にね。うん、今でもその光景がありありと蘇るよ。(同上)
でもさ、彼女と手をつなぐってのは、ずいぶんたいしたことだったね。(中略)君の手が汗で湿っているかどうかすら、ジェーンの場合にはいちいち気にしなくていいんだ。君にわかっているのは、君は幸福だってことだ。ひたすら幸福なんだよ。
カール・ルース
ホールデンが以前に退学になった学校時代の友人。何故か同性愛に詳しい。二日目の夜に、ホールデンは彼とバーで飲む。
ルースくん。ちょっとしたやつなんだ。(中略)彼がやってくれたことといえば、夜遅く自分の部屋にみんなを集めて、セックスの話をするくらいのもんだった。(本文より引用)
「なんだって、ジョー・ブローがゲイだって?(中略)あのでかいタフな男が?」(中略)するとルースはいつも「まさしく」と言った。「まさしく」っていうのが彼の口癖なんだ。(同上)
「おい、いいか、ひとつはっきりさせておきたいんだけどな、今夜のところ俺は典型的なコールフィールド風質問に答えるつもりはまったくないんだ。お前はいったいいつになったら大人になるんだ」(同上)
ミスタ・アントリーニ
ホールデンが以前に退学になった学校で、英語教師だった若い先生。ホールデンは二日目の夜に先生の家に泊まりに行くが、ちょっとしたトラブルになる。
このミスタ・アントリーニは、僕がこれまでに教わった教師の中では、おそらくいちばんまっとうな人だった。(中略)だから、敬意を抱きつつも、適当にふざけた口をきくことだってできるわけだ。(本文より引用)
「私が見るに、君はある種の、きわめておぞましい落下傾向にはまりこんじゃっているみたいだ」(同上)
「でもね、私の目にはありありと見えるんだよ。君が無価値な大義のために、なんらかのかたちで高貴なる死を迎えようとしているところがね」彼はちょっとおかしな目で僕を見た。(同上)
本当に気になったのは、目を覚ましたときに先生が僕の頭を撫でたりしていたってことなんだよ。そのとき僕はゲイっぽいちょっかいを出されたと思ったわけだけど、本当にそうだったのかな?(同上)
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