2007年12月09日

サリンジャー「キャッチャー・イン・ザ・ライ」あらすじ

キャッチャー・イン・ザ・ライ 村上春樹訳
 ホールデンの語る物語は、高校を退学させられると決まってから、衝動的に寮を飛び出す土曜日から始まり、月曜日で終わります。
 このわずか三日間に様々な出来事がぎゅっと圧縮されて詰め込まれている印象です。



 *本文からの引用文については、野崎孝訳「ライ麦畑でつかまえて」および、村上春樹訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」より、それぞれ同じ箇所から引用しています。

 *文中の登場人物名をクリックすると、登場人物紹介のページが開きます。



 この作品は、ホールデンが兄のDBに聞かせたことと同じ話を、読者にも話して聞かせるという設定になっています。

一日目(土曜日)

 午後三時ごろ、ホールデンがフットボールの試合を見ているところから話が始まります。

野崎孝訳
 とにかく、僕は、そのイカレタ大砲のそばに突っ立って、ケツももげそうなくらい寒い中で、下の試合を見てたんだ。 

村上春樹訳
 とにかく僕はそのクレイジーな大砲のわきにつっ立って、試合を見おろしながら、骨の髄までがちかちに凍えていた。

 スペンサー先生に別れのあいさつをしに行くと逆に説教をされ、寮に戻ると隣室のアックリーには読書の邪魔をされ、ルームメートのストラドレイターとはケンカとなり、孤独感に堪えられなくなったホールデンは衝動的に学校の寮を飛び出してしまいます。

野崎孝訳
 急にあることを決心したんだな。ペンシーから飛び出してやれ――そのまま、その夜のうちに飛び出してやれ――そう僕は決心したんだ。

村上春樹訳
 とつぜん心が決まったんだよ。つまりさ、このままペンシーを出ていってやろうじゃないかってね。今夜のうちに、さっさとここにおさらばするんだ。

 みんなが寝静まった深夜、彼は捨て台詞を残して、学校を飛び出します。

野崎孝訳
 ありったけの声を張り上げてどなったんだ――「がっぽり眠れ、低脳野郎ども!」ってね。

村上春樹訳
 それから声を限りに叫んだ。「ぐっすり眠れ、うすのろども!

 汽車に乗ってニューヨークに向かったホールデンは、変態ばかりのホテルに泊まりますが、ホテルのエレベーター係モーリスに声をかけられ、気がすすまないのにサニーという売春婦を部屋に呼んで、ひどい目にあいます。

二日目(日曜日)

 女友達のサリーを電話で呼び出してデートをします。
 ホールデンが本当に会いたいのはジェーンという女の子なのですが、何故か電話する気にならず、大して好きでもないサリーを呼んでしまいます。
 デートの途中で口論になり、ホールデンの不注意な一言で彼女はカンカンになって帰ってしまいます。

 この頃から、ホールデンの言動が段々おかしくなってきます。

 バーで友人のルースと飲み、散々酔っぱらった後、あてもなく公園のベンチに座ってガタガタ震えながら、ホールデンは「死」について考えます。そして、死んだ弟のアリーのことを想います。

野崎孝訳
 アリーの墓石にも雨が降る。あいつの腹の上の芝生にも雨が降る。そこらじゅうが雨なんだ。

村上春樹訳
 アリーの嘘くさい墓石にも雨が降っていたし、彼のおなかの上に生えている草にも雨が降っていた。そこいらじゅう全部に雨が降っていた。

 この後、両親が不在の家にこっそり帰ったホールデンは10歳の妹のフィービーと話をします。
 フィービーは10歳にしてはとても賢い少女で、ホールデンにとって最大の理解者でもあります。
 ホールデンは、自分の思いを彼女に真剣にぶつけます。

野崎孝訳
 「兄さんは世の中に起こることが何もかもいやなんでしょ」
 「違う。違うよ。絶対にそんなことはない。だからそんなことは言わないでくれ。なんだって君はそんなことを言うんだ?」
 
 (中略)

 「アリーは死んだのよ――兄さんはいつだってそんなことばかりいうんだもの!」
 「アリーが死んだのは僕だって知ってるよ!(中略)死んだからって、好きであってもいいじゃないか、そうだろう?」
 
 (中略)
 
 「そんなの、実際のものじゃないじゃない!」
 「いや、実際のものだとも!実際のものにきまってる!どうしてそうじゃないことがあるものか!みんなは実際のものをものだと思わないんだ。クソタレ野郎どもが」

村上春樹訳
 「けっきょく、世の中のすべてが気に入らないのよ」          
 「そうじゃない。そういうんじゃないんだ。絶対にちがう。まったくもう、なんでそんなことを言うんだよ?」
 
 (中略)
 
 「アリーは死んでるんだよ。自分でもいつもそう言ってるじゃない!」
 「死んでるってことはわかってるよ!(中略)それでもまだ僕はあいつのことが好きなんだ。それがいけないかい?」

 (中略)

 「そんなのぜんぜん意味ないことじゃない!」
 「すごく意味あることだよ!意味なんてちゃんと大ありだよ!どうして意味がないなんて言えるんだ?どんなことにでもしっかり意味があるってことを、みんなぜんぜんよくわかってないんだ。僕はそういうことにクソうんざりしちまっているんだ」

 この後、作品の題名にもなっている「ライ麦畑でつかまえて」の話が出てきます。

 ホールデンの心の底にたまったものが思い切り吐き出される、このフィービーとのやり取りのシーンは、この物語のハイライトと言ってもいいと思います。

 この後両親が帰宅したため家を抜け出たホールデンは、以前の学校で世話になったミスタ・アントリーニの家に泊まりますが、ここでもひと悶着あって、結局駅の待合室で夜を明かすことになります。

三日目(月曜日)

 家に帰る気がなくなったホールデンは、ヒッチハイクで西部に行こうと本気で考えます。
 一緒に行きたいというフィービーに対して本気で怒ってしまい、ケンカになってしまいます。
 自分を許してくれないフィービーと何とかして仲直りしようと必死のホールデンは、西部に行く気もなくなってしまいます。
 
 家に帰ることを決心したホールデンは、フィービーとも仲直りをします。そして、回転木馬に乗るフィービーを、雨にぬれながら眺めているところで物語は終わります。

野崎孝訳
 フィービーがぐるぐる回りつづけてるのを見ながら、突然、とても幸福な気持ちになったんだ。(中略)なぜだか、それはわかんない。

村上春樹訳
 フィービーがぐるぐる回り続けているのを見ているとさ、なんだかやみくもに幸福な気持ちになってきたんだよ。(中略)どうしてだろう、そのへんはわからないな。



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pjo1062002 at 18:35 │Comments(0)TrackBack(0)clip!

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