2007年11月10日

サン=テグジュペリ 「星の王子さま」 新潮文庫

サン=テグジュペリ画 星の王子さま





河野万里子訳 2006年初版 フランス文学




読みやすさ
 ★★★★★ (子どもで読める文章)

ボリューム ★☆☆☆☆ (約150ページ、非常に短い)

挿絵の有無 あり 作者自身によるカラー挿絵多数

 
 お子様向けではない大人のための絵本

 硬い頭では楽しめないが、読んでいるうちに頭も心もほぐれてくる


 最初に読んだときは、文章があまりに子どもじみているような気がして、作品の良さが分かりませんでした。
 ただ、何度か読み返しているうちに(簡単なので気軽に読み返せる)、素直に物語に入り込めるようになって面白くなってきました。
 最初から楽しめなかったのは、おそらく私の頭が硬くなっていて、子どもっぽい印象だけで判断してしまったためでしょう。
 内容的には、大人でこそ意味が分かる部分が多いと思います。

サン=テグジュペリについてWikiで見る
星の王子さま についてWikiでみる



あらすじ

 砂漠に不時着したパイロットの前に、不思議な男の子が現れます。物語はパイロットと「星の王子さま」との対話で進んでいきます。友達となった二人ですが、最後には悲しい別れが待っていました。

星の王子さま あらすじ(詳細)


大人への痛烈な皮肉

 この作品は、子供の視点を借りることによって、大人社会(人間社会)を大いに皮肉っています。
 小さな星に住む「星の王子さま」が、地球へ向かう途中に立ち寄る六つの星の住人(王さま、大物気どり、酒びたり、実業家、点灯人、地理学者)が、それぞれ典型的な大人のタイプとして描かれています。
 例えば、その中の「実業家」は、小さな星の上で、空の星をひたすら数えています。それが彼の仕事です。
 自分が星の持ち主だという「実業家」に、王子さまは質問します。
 
 「じゃあ、星を持っていると、なんの役に立つの?」
 「金持ちでいられる」
 
 「金持ちでいられると、なんの役に立つの?」
 「ほかの星を買える。誰かが新しく見つけたときに」 
 
 「それでその星をどうするの?」
 「管理する。数をかぞえ、またかぞえなおす」と実業家。
 「むずかしい仕事だ。でも私は、有能な人間だからな!」(本文より引用)
 
 
 これでは、なにが「目的」でなにが「手段」なのか分かりません。そんな「実業家」に、王子さまは言います。
 
 「ぼくは」ふたたび王子さまは言った。
 「花の持ち主だったから、毎日水をやっていた。三つの火山の持ち主だったから、毎週煤のそうじをしていた。・・・中略・・・だから火山にとっても花にとっても、ぼくが持ち主で、役に立っていた。でもあなたは、星の役に立っていない・・・」(本文より引用)
 
 痛烈な言葉です。ですが、それでも「実業家」は、「ただ星を数える」という報われない作業を、この先も延々と続けていくのでしょう。

 私が毎日、会社でやっている仕事も、もしかしたらこの「実業家」のやっていることと大差ないのではないか?と思うことがあります。


恋愛を思わせる印象的な言葉

 「星の王子さま」と、バラの花とのエピソードは、印象的な言葉が多くあって、「言葉が美しい」といわれるこの作品の中でも、私が特に好きなところです。
 
 王子さまは、自分の星で一輪のバラを育てていました。このバラの花は気まぐれで王子さまを困らせます。

 こうして小さな王子さまは、愛する気持ちがおおいにあったにもかかわらず、じきに花のことを信じることができなくなった。(本文より引用)

 自分の星を旅立つことにした王子さまは、バラに別れを告げます。

 「さようなら」王子さまは花に言った。
 花は答えなかった。
 「さようなら」もう一度言った。
 花は咳をした。でも風邪のせいではなかった。
 「わたし、ばかだった」とうとう花が言った。
 「ごめんなさい。幸せになってね」(本文より引用)

 こうしてバラの花と別れた王子さまは、地球に来て、キツネとの出会いを通じ、「絆を結ぶ」ということを知ります。

 「きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。きみは、きみのバラに、責任がある・・・」(本文より引用)

 王子さまは、自分の星に残してきたバラの花を思います。 

 「ぼくはあのころ、なんにもわかっていなかった!ことばじゃなくて、してくれたことで、あの花を見るべきだった。あの花はぼくをいい香りでつつんでくれたし、ぼくの星を明るくしてくれたんだ」(本文より引用)

 
 「ぼくが水をやったのは、あのバラだもの。ガラスのおおいをかけてやったのも、あのバラだもの。・・・中略・・・だって彼女は、ぼくのバラだもの」(同上)
 
 「ね・・・ぼくの花・・・ぼくはあの花に責任があるんだ!」(同上)

 このバラの花のモデルは、作者の愛した女性だと言われています。他の解釈もあるそうですが、やはり、このバラの花は女性を象徴していると考えるのが、自然だと思います。


大人の男性にもおすすめ

 この「星の王子さま」は、文章がシンプルゆえに、想像をふくらませて様々な解釈をすることができます。そのための解説本も多く出ているほどです。簡単ですが、非常に奥の深い作品です。 

 この作品は、その”メルヘンチック”なイメージから敬遠してしまう人もいるかもしれませんが、女性だけでなく、男性にも読んでみることをおすすめしたい作品です(レジに持っていくのは少々気恥ずかしいですが)。


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 下記のリンクより、星の王子さま(新潮文庫)の商品紹介ページへジャンプします。
 それぞれのレビュー記事を読むのも参考になります。

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関連リンク

星の王子さまミュージアム公式ページ
 箱根にこんな施設があるとは知りませんでした

星の王子さま公式サイト
 面白い仕掛けがある公式サイト




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